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読んでいない本について堂々と語る方法/ピエール・バイヤール

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読書好きにもおすすめの読書論

本を「読んでいない」という状態の考察と、読んでいない本を語るいくつかのケースの分析を通して、読書とはどういう行為なのかについて迫る本。

『読んでいない本について堂々と語る方法』を読み解く

「本を読んでいない」とはそもそもどういう状態なのか。逆に、どういう状態であれば、「本を読んだ」といえるのか。

改めて考えてみると、明確に答えるのがすごく難しい問いだと思います。

本書では、<共有図書館><内なる図書館>などといった筆者独自の定義を交えながら、本というものを物理的な意味を超えたところで捉えていきます。そして、その上で本について語る状況に考察を加えていきます。

<共有図書館>とは、本の外部、つまりその本と他の本の位置付けに焦点を当てた際の全体の見晴らしのようなものをいいます。

<内なる図書館>とは、共有図書館の主観的な部分を指します。

読んだ本を語るということは、1冊の本だけについて、その内容を語るというところにとどまりません。自らの経験と関連付けたり、他の本との位置付けの中で理解したことが、自分の解釈となっていきます。

そのため、その本を読んだことはない場合であっても、想像にはなりますが、過去に読んだ本と関連づけたりすることでその本について語ることはできるでしょう。

「読んでいない本について堂々と語る方法」を考えていくと、その背後には、読書という概念そのものが見えてくる。そこが、本書のおもしろいところだと思います。

『読んでいない本について堂々と語る方法』目次


Ⅰ未読の諸段階(「読んでいない」にも色々あって)
Ⅱどんな状況でコメントするのか
Ⅲ心がまえ
結び

第一部では「読んでいない」という状態をいくつかの段階に分けて考察されています。

第二部では、読んでいない本について語ることになった、具体的な場面が分析されています。

そして第三部には、読んでいない本についてコメントする際に参考になるアドバイスが述べられます。

ココを読んでほしい!

教養があるかどうかは、なによりもまず自分を方向づけることができるかどうかにかかっている。教養ある人間はこのことを知っているが、不幸なことに無教養な人間はこれを知らない。
教養があるとは、しかじかの本を読んだことがあるということではない。
そうではなくて、全体のなかで自分がどの位置にいるかがわかっているということ、すなわち、諸々の本は一つの全体を形作っているということをしっており、その各要素を他の要素との関係で位置づけることができるということである。
ここでは外部は内部より重要である。というより、本の内部とはその外部のことであり、ある本に関して重要なのはその隣にある本である。

本書の序盤に、とある話を通じて、「全体の見晴らし」という概念が出てきます。この全体の見晴らしという概念は、本書の核とも言えるものだと思います。

著者はこの概念は、応用可能な便利なものであるとし、教養にもあてはまるとします。

全体を捉えること、そしてその中での位置付けを把握すること、これは普段の仕事・ビジネスにも活かせる視点だと思いました。

感想

本をたくさん読んでいると、ある時点から、読書で得た知識・考え方が有機的につながっていく感覚が生まれます。その感覚に近しいことが、別のトピックから言語化されていたので、新しい発見が得られました。

本を読むことが好きな私ですが、改めて「読書」について考えさせられる1冊でした。