羅生門スタイルでSpotifyの創業を描いた『ザ・プレイリスト|Netflix』
Summary
Spotifyの創業を6人の異なる立場から描いたドラマ。 創業者・大手レーベル・弁護士・CTO・共同創業者・アーティスト と、毎話違った視点で物語が描かれます。
Question
このドラマの特徴は?
Spotify創業という史実を、創業者視点のサクセスストーリーとしてではなく、関係者6人の異なる視点から描いている点にこのドラマの特徴があると感じます。
既存の業界構造を破壊した新しいビジネスを立ち上げる。そこには、関わる人々の様々な思惑がぶつかります。見終わってみて、このストーリーをうまく・おもしろく描き出すためには、この脚本構成が大事だったのだと気付かされました。 衝突する立場、ぶつかる思惑・意見。それらをみんなが完璧に納得した上で進めていくことはほとんどない。どちらか一方が折れながらも、突き進んでいく。物語としては、それゆえのすっきりしない感、後味の悪さもあったりします。しかし、それもまた真実なのだと思いました。
ドラマの見どころは?
自分が好きな点は2つあります。
第三話の場面切り替え
第三話の主人公は、権利周りの交渉を担当した弁護士ペトラ・ハンソンです。彼女の物語に関しては、場面の切り替えの描写が特徴的で、そこが非常におもしろいと感じました。法律事務所とスタートアップ、ストックホルムとニューヨークなど、所属や場所の世界の切り替えが、「扉と通路」で描かれます。あまりにもぱっと場面が切り替わるので、途中で頭が追いつかなくなったりもしました。
高い給料は約束されているが、有無を言わさないボスの下、古い体質の法律事務所で働き続けるか。掲げるビジョンに心躍るが、約束された昇進の道を蹴って、リスクを負ってまで、スタートアップで働くのか。一世一代の大勝負といっても過言ではないその決断に、ペトラの心情は揺れ動きます。狭間で揺れ動く心情が、法律事務所の扉とspotifyの事務所の扉の間の通路で表現されているのだと思いました。
第三話・第四話のひらめき
多くのスタートアップには、既存のビジネス構造を破壊するのに一役かった、現状を打破するテクノロジーやアイデアのひらめきがあったりします。spotifyにも「ひらめき」がいくつか出てくるのですが、その着想が具体的な何から得られたのか?それを知ることができるのがおもしろいと感じました。myプレイリストの作成は何からひらめいた?サービスのレスポンスを速めるアイデアは何を見てひらめいた?ぜひ、本編を見て確認してみてください。
Association of ideas
羅生門スタイル
この記事を書くにあたり調べていて知ったのですが、一つの事件を、関係した複数の人物の証言に分けて描く物語のスタイルは「羅生門スタイル」と呼ばれているそうです。
黒澤明監督の映画『羅生門』は、被害者、被害者の妻、加害者の盗賊が三者三様の証言をすることで真相がぼやける状況を描いており、その映画構成が由来だそうです。
このドラマももしかしたら、羅生門スタイルにインスピレーションを得ているのかもしれません。
Memo
ドラマの原作は『Spotify 新しいコンテンツ王国の誕生/スベン・カールソン、ヨーナス・レイヨンフーフブッド』です。まだ読んだことがないので、機会があれば読んでみたいと思います。